小林勇『人はさびしき』(文芸春秋、1973) 生前ゆかりあって親しく交わった人、仕事上での恩人など、逝きし人たちとの思い出を回想した、人物論集。著者は、元岩波書店会長。創業社長岩波茂雄の薫陶を受け、やがて娘婿となった人。それよりなにより、岩波新書を創った人。代表取締役をも務めた。 出版人だが、画家でもあり、随筆家でもあった。 岩波書店にあって、仕事で担当した縁から公私にわたって親しくした人らが並ぶとなると、その顔ぶれが凄い。長谷川如是閑、安部能成、斎藤茂吉、内山完造と魯迅、三木清、志賀直哉ほか。が、そうした傑物著者たちの件については、今は措く。 気楽な読物雑誌の企画で、生前の池島信平と対談(放…