新美南吉とは、キツネの物語「手袋を買いに」でもよく知られる童話作家のことです。南吉は、東京外国語大学英語部文科へ入学した19歳の時に、『赤い鳥』に「ごん狐」などの童話を寄稿しています。その後、いくつかの職を遍歴した後、生まれ故郷の村に近い安城高等女学校の教諭となり、「赤い蝋燭」や「久助君の話」、「花のき村の盗人たち」などの作品群を遺して、わずか29歳7か月の生涯を閉じています。 生来が病弱であるうえに、暖かい家庭にも恵まれませんでした。新美南吉こと、本名渡辺正八は、畳職人の父親と下駄や雑貨の店を営んでいた母との間に生まれましたが、4歳で実母と死別し、6歳のときに継母が来て一緒に住むことになりま…