人死にて言語(ラング)絶えたるのちの世も風に言の葉そよぎてをらむ 歌集の終り近くに置かれた、「禁色」と題された連作のなかの一首である。 源氏物語の柏木の禁断の恋をめぐる歌ではじまり、禁書目録、猥褻本の著者の追放、サヴォナローラの焚書、炎に包まれるアレクサンドリア図書館など、書物の禁止と滅亡をめぐる連作のなかに、この一首は置かれている。 禁じられていても、禁じられているからこそ、人は命をかけてでも、言葉を紡がずにはいられない。そして、そのような命がけの言葉は、人が死んでも、書物が焼かれても、木の葉のそよぎのように、人間の耳にはしかととらえられないかたちであれ、おそらく生き続けるだろう。文学研究に…
5/18 (土)14:00〜15:30『現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号』( 書肆侃侃房)刊行記念 服部真里子 × 木下龍也 × 川村有史 × 上坂あゆ美 × 青松輝トークイベント 青山ブックセンター https://aoyamabc.jp/products/gendaitanka3-0518 現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号 作者:木下龍也,服部真里子,上坂あゆ美,青松輝,山川藍,菅原百合絵,山階基,川村有史,山下翔,橋爪志保 書肆侃侃房 Amazon
昨年の年末に今年の一冊として紹介されていた菅原百合絵の詩集「たましひの薄衣」。ようやく読むことができた。短歌や俳句のようなリズムで読むのとは異なり、この歌集では、『薄衣』をまとった内に『たましひ』を揺れ伝える、そのような言葉の333もの葉がゆれているのを感じられる。これが新鮮な現代詩の姿なのであろう。いくつか紹介したい。 きみの知らぬきみに触れえず午睡する幽けき息を聴きゐたるのみ たましひのまとふ薄衣ほの白し天を舞ふときはつかたなびく 一生は長き風葬 夕光を曳きてあかるき樹下帰りきぬ
11/1(水) 通所186日目。 11/2(木) 裁かれて無慘の生を全󠄁うせよ それのみに希ひし延命のこと (水原紫苑『快樂』短歌研究社 p248) 11/2(木) E・M・フォースター『インドへの道』(瀬尾裕訳 筑摩書房 1985.8)を買った。 11/3(金) 通所187日目。 11/3(金) 断崖は髑髏の貌(かほ)に赤く焼け眼窩の洞窟(あな)は暗くはてなし (『谷川健一全歌集』春風社 p329) 11/4(土) ぼくの文法のなかには踏み荒らされた泥濘が飢えている。 (崎村久邦『饑餓と毒』思潮社 p28) 11/5(日) ぎざぎざになればなるほどおまへは 生きてゐるのだよわたしは耐へよう …
いづかたの岸にも着かずたゆたへる長き月日を画布に見てをり 「不在の在」『たましひの薄衣』菅原百合絵 P118 ひとつ前に「モネの描く池」を詠んだ歌があります。池には捨てられた小舟。 小舟はもうどこの岸にもつかない。 この歌の中で見ているのは、小舟や水ばかりではなく、画布の中に閉じ込められた歳月。 一枚の画布には描かれたあとの時間が凝縮されています。画家が切り取った、水辺の風景と、その後の時間。 しばらく見ている間に、絵の世界に馴染んでしまって、現実にもどってくるのに時間がかかりそう。 美意識で構築された本歌集の中の時間はとても静謐で豊か。ゆっくり何かと向き合う。そんな対象を持つことの豊かさを感…
塔2023年11月号に掲載された書評を掲載しておきます。菅原百合絵さんの第一歌集『たましひの薄衣』を取り上げました。 塔の「歌集歌書探訪」のコーナーで私が担当する書評は、今回が最後です。2年間に4回だけの出番ですが、とても楽しく書籍を読み比べ、書くことができました。 担当させてくださってありがとうございました。また別の機会があれば、よろしくお願いいたします。
(ブログの上位記事として表示されるように、便宜的に2023年の記事としています。いつか2022年11月20日付けに戻します。) 全然更新できてなくてすいません。家のことと仕事と大学院と、そして短歌のことで手一杯でした。 そんなこんなで、2022年11月20日(日)付で9年ぶりの歌集、第3歌集『memorabilia/drift』(書肆侃侃房、\2,100円+消費税)と第4歌集『polylyricism』(短歌研究社、\1,700+消費税)を同時刊行します。ぜひお近くの書店やオンライン書店等でお求めください。 *1 第3歌集『memorabilia/drift』 第4歌集『poylyricism…
2023.7.1 昼からお友だちと映画。初めて日比谷のTOHOに行って、『怪物』を観た。子どもってこんなにまっすぐなんだ、と思って、感動でぽろぽろ泣いた(もちろんそれ以外にも考えたことはあるけどさ)。ラストのシーンで坂本龍一の曲流すのもずるい。最後の配信ライブ思い出してしまった。そのあとブヴェットでチョコムース食べた。おいしかったけど重かった 新宿紀伊國屋で歌集を5冊買う(だいぶ我慢した。ほんとうは欲しいもの全部買いたかったけどこの後どんな出費があるかわからないので)。SUQQUでシグニチャーカラーアイズ01と、グロウタッチアイズ06を買った。アイメイクだけが大好き。グロウタッチアイズを涙袋に…