国会図書館デジタルライブラリーで読めるようになった本の中に、清水信「作家と女性の間」(現文社、昭和42年)というのがあって、中々面白かった。 先ほど完結した『田中英光全集』十一巻(芳賀書店刊)に対して、私は文句を言った。初めての全集で、もちろん良心的な出版ではあったが、彼がカストリ雑誌にかきなぐった小説がほとんど収録されずに、全集から削られるという編集方針に、私は不満だったのである。同年生まれの織田作之助をライバル視して、売り原稿を書きなぐった形跡があるが、その荒れたカストリ小説の中に、こういう作家の乱世を生きた真のバイタリティーが見られる、というのが、私の考えで、粗雑な内容ゆえに、これを捨て…