『「雨の木」を聴く女たち』(大江健三郎、著)は、1980(昭和55)年から1982(昭和57)年にかけて、文學界および新潮に発表された次の五作からなる連作短編集である。 ・頭のいい「雨の木」・「雨の木」を聴く女たち・「雨の木」の首吊り男・さかさまに立つ「雨の木」・泳ぐ男――水の中の「雨の木」 ただ、最後の一編については、その冒頭で作者自身が、「……独立したものとしてまとまりよくするために、僕は『泳ぐ男』というタイトルを新しく冠して、直接「雨の木(レイン・ツリー)」に関わる細部はとりのぞくことにもした」と記述している通り、他の四つの相互間に見られるような連繋は表面には現れていない。 (adsby…