小君、 御車の後にて、二条院におはしましぬ。 ありさまのたまひて、 源氏 「幼かりけり」 とあはめたまひて、 かの人の心を爪弾きをしつつ恨みたまふ。 いとほしうて、ものもえ聞こえず。 源氏 「いと深う憎みたまふべかめれば、 身も憂く思ひ果てぬ。 などか、よそにても、 なつかしき答へばかりはしたまふまじき。 伊予介に劣りける身こそ」 など、心づきなしと思ひてのたまふ。 ありつる小袿を、 さすがに、御衣の下に引き入れて、 大殿籠もれり。 小君を御前に臥せて、 よろづに恨み、かつは、語らひたまふ。 源氏 「あこは、らうたけれど、 つらきゆかりにこそ、え思ひ果つまじけれ」 とまめやかにのたまふを、 い…