【源氏物語 64 第5帖 若紫 8】〈古文〉 「げに、若やかなる人こそうたてもあらめ、 まめやかにのたまふ、かたじけなし」 とて、ゐざり寄りたまへり。 「うちつけに、あさはかなりと、御覧ぜられぬべきついでなれど、 心にはさもおぼえはべらねば。仏はおのづから」 とて、おとなおとなしう、恥づかしげなるにつつまれて、 とみにもえうち出でたまはず。 「げに、思ひたまへ寄りがたきついでに、かくまでのたまはせ、 聞こえさするも、いかが」 とのたまふ。 「あはれにうけたまはる御ありさまを、 かの過ぎたまひにけむ御かはりに、思しないてむや。 言ふかひなきほどの齢にて、 むつましかるべき人にも立ち後れはべりにけ…