初めよりおしなべての上宮仕へしたまふべき際にはあらざりき。 おぼえいとやむごとなく、 上衆めかしけれど、 わりなくまつはさせたまふあまりに、 さるべき御遊びの折々、 何事にもゆゑある事のふしぶしには、 まづ参う上らせたまふ。 ある時には大殿籠もり過ぐして、 やがてさぶらはせたまひなど、 あながちに御前去らずもてなさせたまひしほどに、 おのづから軽き方にも見えしを、 この御子生まれたまひて後は、 いと心ことに思ほしおきてたれば、 「坊にも、ようせずは、この御子の居たまふべきなめり」と、 一の皇子の女御は思し疑へり。 人より先に参りたまひて、 やむごとなき御思ひなべてならず、 皇女たちなどもおはし…