暗くなるほどに、 女房 「今宵、中神、内裏よりは塞がりてはべりけり」 と聞こゆ。 源氏 「さかし、例は忌みたまふ方なりけり。 二条の院にも同じ筋にて、いづくにか違へむ。 いと悩ましきに」 とて大殿籠もれり。 「いと悪しきことなり」 と、これかれ聞こゆ。 「紀伊守にて親しく仕うまつる人の、 中川のわたりなる家なむ、このころ水せき入れて、 涼しき蔭にはべる」 と聞こゆ。 源氏 「いとよかなり。 悩ましきに、牛ながら引き入れつべからむ所を」 とのたまふ。 忍び忍びの御方違へ所は、あまたありぬべけれど、 久しくほど経て渡りたまへるに、 方塞げて、ひき違へ他ざまへと思さむは、 いとほしきなるべし。 紀伊…