「いとうたて、乱り心地の悪しうはべれば、 うつぶし臥してはべるや。 御前にこそわりなく思さるらめ」 と言へば、 「そよ。などかうは」 とて、かい探りたまふに、 息もせず。 引き動かしたまへど、なよなよとして、 我にもあらぬさまなれば、 「いといたく若びたる人にて、 物にけどられぬるなめり」と、 せむかたなき心地したまふ。 紙燭持て参れり。 右近も動くべきさまにもあらねば、 近き御几帳を引き寄せて、 「なほ持て参れ」 とのたまふ。 例ならぬことにて、御前近くもえ参らぬ、 つつましさに、長押にもえ上らず。 「なほ持て来や、所に従ひてこそ」 とて、召し寄せて見たまへば、 ただこの枕上に、 夢に見えつ…