さむざむと日輪あそぶ冬至かな 飯田蛇笏。ゆるるは竹のみ冬至の日のつくる影 山口青邨。一陽来復キューピー人形手をひろげ 村山古郷。冬至とてなすこともなく日暮れけり 石川桂郎。冬至には多くの雲と田を見たり 相生垣瓜人。空海の夢に色ある冬至かな 橋閒石。いつの間に冬至過ぎたる陽射かな 桂 信子。 「もう何年前になるか思い出せぬが日は覚えている。暮れもおし詰まった二十六日の晩、妻は下女を連れて下谷摩利支天の縁日へ出かけた。十時過ぎに帰って来て、袂からおみやげの金鍔と焼き栗を出して余のノートを読んでいる机のすみへそっとのせて、便所へはいったがやがて出て来て青い顔をして机のそばへすわると同時に急に咳をして…