サッカーにおいて「小さな一点」というのはあり得ない。ゴールのすべてが「取り返しのつかない致命的な一点」なのだ。実況のアナウンサーが「今のは大きな一点です」と言ったら本当は殴ったほうがいい。(村上龍 すぐそこにある希望 すべての男は消耗品である。Vol.9 幻冬舎文庫) この文章を読んで、衝撃を受けた。気持ちのいい衝撃で、笑い出したくなるようだった。殴る、という行為は暴力の一種で、決して肯定されるべきものではない。ここでも、「本当は」とつけられている。だから、殴ったほうがいい、という表現は、比喩のようなものだろう。この表現にこめられているのは、本能的な怒りかもしれない。怒り、というのはおおげさか…