はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十二 「タッタヒトリデイイ」 たとえば、泣く泣く自分の家を手放さなければならなくなったとしよう。祖父が、友人の建築士に頼んで建てた拘(コダワ)りの家である。それなりのお金が必要だということもあるが、そんな、思い入れが強い家であるだけに、安価では売りたくない。その価値を理解してくれる人に、その価値に見合った価格で買ってもらいたい。みたいな、そんな感じで、そんな思いで、家を売りに出さなければならなくなった方って、おそらく、一人や二人じゃないと思う。 この、家を売る。芸能事務所が新人タレントを売り出すこととは、根本的に違う。なぜなら、たった一人でいいからであ…