💠その年の暮れの押しつまったころに、 源氏の御所の宿直所《とのいどころ》へ 大 輔《たゆう》の命婦《みょうぶ》が来た。 源氏は髪を梳《す》かせたりする用事をさせるのには、 恋愛関係などのない女で、 しかも戯談《じょうだん》の言えるような女を選んで、 この人などがよくその役に当たるのである。 呼ばれない時でも大輔はそうした心安さから よく桐壺へ来た。 「変なことがあるのでございますがね。 申し上げないでおりますのも意地が悪いようにとられることですし、 困ってしまって上がったのでございます」 微笑《ほほえみ》を見せながらそのあとを大輔は言わない。 「なんだろう。私には何も隠すことなんかない君だと思…