🌸【古文】 君は何心もなく寝たまへるを、 抱きおどろかしたまふに、 おどろきて、宮の御迎へにおはしたると、 寝おびれて思したり。 御髪かき繕ひなどしたまひて、 「いざ、たまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」 とのたまふに、 「あらざりけり」 と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、 「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」 とて、かき抱きて出でたまへば、 大輔、少納言など、 「こは、いかに」 と聞こゆ。 「ここには、常にもえ参らぬがおぼつかなければ、 心やすき所にと聞こえしを、 心憂く、渡りたまへるなれば、 まして聞こえがたかべければ。 人一人参られよかし」 とのたまへば、心あわたたしくて、 「今日は、いと便なく…