ほろほろとやまぶきちるかたきのをと 貞享5年(1688)の作。『笈の小文』では「西河(にしかう)」と前書がある。そこは、音無川が吉野川に合流するあたりの地域であり、「滝」は、川の激流や早瀬も指すことから、そのいずれかの河畔で詠まれたものと思われる。『笈の小文』では、掲句の直後に、「蜻蛉が滝」という前書らしき記述があるが、発句は見当たらず、「布留の滝は布留の宮(石上神宮)より二十五丁の奥也 布引の滝 箕面の滝、勝尾寺へ越る道に有」という文章が続いている。従って、『笈の小文』は未定稿である可能性も指摘されている。 『日本古典文学大系-芭蕉句集』では、吉野川の激流となって岩の間を滾り落ちる瀬音につれ…