犬のラキさんは、ものすごく物分かりがいい。 でも、同時にものすごく、天真爛漫な「いぬ」だ。 わんわんと、外の怪しい人影に吠えた後、呼べば大急ぎで戻ってきて私の足元にひっくり返る。 「ほえちゃ、だめだったよね、そーーだったねーーー!」 と言わんばかり。 私の部屋の家具という家具も、彼女の噛み跡だらけだ。 リビングの絨毯は、もともと長方形だったが、もはやどこにもきれいな直線をみせる一辺はない。 だけど、一体、モノがなんだっていうんだ。 もちろん、大切にしておきたいモノもあるけれど、結局のところ、私たちがこの世を去る時、持っていけるのは「経験」という宝物だけだ。 私は、ラキちゃんの天真爛漫さ、犬らし…