アルテュール・ブラントのヒトラーの馬を奪還せよ ――美術探偵、ナチ地下世界を往く (原題 De paarden van Hitler)を読んだ。ヒトラーの馬と言われてもあまりピンとこないと思う。私も全く何のことかわからなかった。ナチスドイツの総統官邸裏にある庭園に通じる階段の左右に一体ずつ巨大な馬のブロンズ像があった。それは「闊歩する馬シュライテンデ・ブフエルデ」と呼ばれていて、ナチスに重用された彫刻家ヨーゼフ・トーラックの作品だ。ベルリン攻防戦の時ソ連軍に総統官邸は砲弾の嵐を浴びせられて、破壊された。しかも、ソ連は戦後残っていた建物もすべて破壊してしまった。その時にこの馬のブロンズも破壊され…