松里公孝『ウクライナ動乱』(ちくま新書)2023年 本書評は、研究会の口頭報告を文章化したものである。 Ⅰ. 本書の特徴 松里公孝『ウクライナ動乱』ちくま新書,2023年 実証研究である本書は既存の文献・資料にくわえて、著者によるウクライナ政治の当事者への聞き取りに依拠している。聞き取りの対象は、政治家(ドンバス地方の二つの「人民共和国」の創設に関わった者など)、オリガーク(財閥経営者)、州知事、学者である。著者松里は出入国にも困難を伴ったであろうウクライナ東部で2014年8月頃、2017年聞き取りを行い、本書に盛られたその記録は貴重な政治資料・証言ともなっている。 本書の視点というべきものは…