(本書および『エジプト十字架の謎』、ディクスン・カーの「死んでいた男」、「二つの死」の内容に触れています。) 『アメリカ銃の謎』はエラリイ・クイーン最大の問題作である。 こう言うと、いや『盤面の敵』か『第八の日』だろう、といった声が聞こえてきそうだ。しかし、『アメリカ銃』に比べれば、あんなものは問題作でも何でもない。これから説明しよう。 『アメリカ銃の謎』はエラリイ・クイーンの「国名シリーズ」第六作で1933年に発表された。最初の三作[i]に見られた「公共の場で不特定多数の容疑者のなかから犯人を探し出すミステリ」に回帰した作品で、二万人の観衆で埋め尽くされたロデオ会場が舞台となっている。カウボ…