(収録作品の犯人、トリック等のほかに、クリスチアナ・ブランドの代表作について注で触れていますので、未読の方はご注意ください。) エラリイ・クイーンの第五短編集『クイーンのフルハウス(Queens Full)』(1965年)[i]は、またまた「らしい」短編集となっている。ポーカーのフルハウスにかけて、中編三編、ショート・ショート二編からなる凝った構成の、しゃれた一冊である(短編集ではなかった)。 もっとも「ライツヴィルの遺産」は中編と呼べるほどのヴォリュームではないように思うが、これも中編(ノヴェレット)なのだろうか。翻訳では比較は難しいだろうが、『犯罪カレンダー』(1952年)の収録作は、皆こ…