(犯人を明かしてはいませんが、未読の人でこんな文章を読む人はいないでしょう。) ドルリー・レーン四部作の掉尾を飾る本書だが、まったく予備知識なく読む読者はどのくらいいるのだろう。 名探偵のシリーズは、大抵の場合、作者が絶筆するか、死去して打ち切りになるのが普通だが、そしてエラリイ・クイーンのシリーズもそれに当てはまるが、レーン四部作は、最初から結末を見据えて書かれた(とされる)珍しい例である。『レーン最後の事件』(1933年)のどの解説をみても、「最初に読んでほしくない」とか、「『Xの悲劇』から順番に読むことをお勧めする」とか、書いてある。これだけ読者にうるさく注文をつけるシリーズものは他にな…