『ミステリマガジン』2024年7月号No.765【令和の鉄道ミステリ】「スティームドラゴンの奇走」霞流一「幸運の境界」山本巧次 ★★★☆☆ ――親の遺した不動産収入で不自由なく暮らしている芸術気取りが自宅で殺された。喜瀬川健一、三十九歳、現場にあったブロンズ像で頭を殴られていた。第一発見者は裸婦像のモデルの一人。被害者は女癖が悪いと評判で、発見者以外の二人のモデルとも付き合っていたらしい。真駒内の主婦にはアリバイがあった。三人目のモデルに会いに函館まで出張すると、北浦佐緒里は死亡推定時刻の直前まで喜瀬川と一緒にいたことを認めた。夫が不倫に気づいていたらしいとの証言から、夫に容疑がかかるが、十時…