拝啓 例年であれば爽やかに感じる金木犀の香が、今年は暴力的に思える程に強く香ってきます。五感とは、その時節の気分にも左右されるものなのでしょうか。同じく作品のうけとり方も。 キリエのうた 『キリエのうた』公開初日のレイトショーで拝見しました。試写会で観た方の絶賛は把握しつつも、小説版を読んだ方の「覚悟して観ないと」との言葉等、ネタバレ忌避派なのに得てしまった事前情報から観るのをちょっと恐れてすらいましたが、冒頭から覆されました。広がる風景の美しさや風合い、話の間合いや速度から、この映画を好きになりそうと思った開始数分。3時間を経て日付が変わる頃、贖罪、天災、人生の理不尽…重い縦糸に編まれる物語…