(本書のトリックに間接的に触れていますので、ご注意ください。) 『ジェゼベルの死』(1948年)[i]は、クリスチアナ・ブランドの第五長編であるとともに、我が国では最高傑作との定評がある。 最初に注目を浴びたブランド作品はといえば、『はなれわざ』だった。ブランドの初お目見えは1958年の『緑は危険』(1944年)だったが、翌年『はなれわざ』(1955年)が刊行されて一気に人気が高まった。その辺りの消息は小林信彦の『地獄の読書録』などを読むとよくわかる。『宝石』誌連載の「みすてり・がいど」1959年5月号は、『はなれわざ』の紹介に始まり、最後は「今月の話題の中心は、どうやら、『はなれわざ』に決っ…