(本書の内容に立ち入っています。ただし、犯人は明かしていません。) クリスチアナ・ブランドは、日本ではカリスマ的な人気を誇っているようだ(欧米のことはよく知らない)。 もっとも、アントニー・バウチャーが言った「ブランドに匹敵する作家を探すとすれば、クリスティ、クイーン、カーのような偉大な巨匠たちのなかに見つけるしかあるまい」という言葉は有名で、あっちこっちで目にする[i]。 ブランドを最初に紹介したのは、都筑道夫であるようだ。『ミステリ・マガジン』に連載した「ぺいぱあ・ないふ」の第一回(1956年9月号)で『はなれわざ』を取り上げて、「近来まれな本格作品」、「ユーモラスでしゃれた小説」[ii]…