(最後のほうで、かなり犯人、トリックについて突っ込んで言及しているので、未読の方はご注意ください。) 『自宅にて急逝』[i]は、クリスチアナ・ブランドの長編ミステリ第四作だが、いよいよ、この作者の本領が発揮され始めたようだ。 訳者あとがきに「この異常な一家」と二度も書かれているように、どうみてもイカレているとしか思えない一族を描いて、全編にわたって「愛情と疑惑と、憐憫と憎悪との奏でる狂ったラプソディ」[ii]が響いている。実に的確に作品をとらえた解説である。 『切られた首』(1941年)に続き、ケント州の田舎屋敷を舞台にしたパズル・ミステリで、離れのロッジで一晩過ごしていた老当主がアドレナリン…