信じていた人間に裏切られる失望は大きい。 トロツキーは25年前までは心の英雄だった。レーニンの右腕、赤軍の組織者であり雄弁家、スターリンとの対決、優れた歴史家。枚挙にいとまのない能力と実績。 それもクロンシュタットの虐殺の一事をもって、ただのイデオロギー狂信者と知ってしまった落胆。自己の信念のために血も涙もない点では宿敵スターリンとそれほどの違いがないわけだ。 ロシア革命はクロンシュタットの水兵たちの反乱がきっかけだったのに、彼らは革命によって舐り殺された。 同様にアーサー・ケストラーも柔軟で束縛されない思想家だと信じ込んでいた。 スターリン主義の闇を描いた『真昼の暗黒』の力量、『偶然の本質』…