イエス・キリストの使徒の一人で、「ペテロの否認(今夜、鶏が鳴く前に、三度わたしのことを知らないと言うであろう)」で有名なペテロは、漁師あがりの純朴で気弱な男だったが、殉教した。 「ローマ帝国におけるキリスト教徒への迫害は日を追うごとに激しくなり、虐殺を恐れた者たちが国外へ脱出する事も当たり前になっていた。ペテロは最後までローマにとどまるつもりであったが、周囲の人々の強い要請により、渋々ながらローマを離れることに同意した。夜中に出発してアッピア街道を歩いていたペテロは、夜明けの光の中に、こちらに来るイエス・キリストの姿を見る。ペテロは驚き、ひざまずき、尋ねた。 『Quo vadis, Domin…