矢代幸雄の著書を処分したいのだが、あまりに想い出が多く、処分しきれない。 手許にあったところで明らかに宝の持ち腐れの専門研究は、手放すに容易だ。『西洋美術史講話 古代編』『東洋美術論考』『受胎告知』などである。しかるべきかたのお手許にあれば、かならずや価値を発揮する。 また雑誌に発表された美術論やエッセイ類がまとめられたものについては、それぞれにうしろ髪引かれる気は起きるものの、私なんぞが細部まで知らなくてもいい。収斂する核心部分だけを残すこととする。愉しい読物として、また啓蒙書・入門書として書かれてあるものも、同様だ。 なかには珍しいものも混じる。しかし残念ながら私には、本を美しいままに保管…