バリのコックリさん。中国にも「扶乩」〔フーチ〕という同類の呪術儀式があるし、今年2005年の春に公開されたアン・ビョンギ監督の韓流映画;『분신사바』〔ブンシンサバ〕も邦題からしてまさしく『コックリさん』であるが。
「ドゥダリ」とは「ビダダリ」=「天女」のことで、その天女の格好をさせた思春期前の処女たちに、イタコが使う東北のオシラサマのような依代;「ブラン・ムンドマム」(=熱にうかされた月)を使って、満月・もしくは新月の「カジャン・クレオン」にお告げを持たらせる、ルナティックな秘儀。「ブラン・ムンドマム」を細密な竹で編んだ笊に入れて、猟奇的な狂歌を歌い掛けながら初潮前の少女たちがトランスすると、この90cmほどの木の棒で出来た素朴な人形が自動的に踊りだす。
♪月の光に咲く花なあに?
つまんで見あげりゃ
真っ赤なお池
耳なし鼻なし口もなし
ころころ転がる
目玉にパクリ…
この秘儀が宮廷舞踊の「レゴン・クラトン」と発展し、更にそれをドイツ人のウォーター・シュピースが観光用の芸能としてアレンジしたものが、今日よく知られる「ケチャ」であり「バロン・ダンス」である。
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★今日ではボナ村で定期的に観光用に踊られており、見ることが可能である。斯くなる上は、1970年代のライアル・ワトソンのように、バリ島よりもっと東の、1万3000以上もの島々に暮らす「ヌス・タリアン」のような、“ルートから漏れた島”を自発的に探すしか、ポリネシアンの原始信仰を見る手立てはない。