政府は8月24日、福島第一原発から出る処理水の海洋放出に踏み切った。奇しくもこの日はシモーヌ・ヴェイユ(1909~43)の80回目の命日でもあった。放出の賛否をめぐる阿鼻叫喚の数々に目を通しているうち、ヴェイユの言葉が思い起こされたのも果たして偶然だったのかどうか。 人間の生は不可能、、、である。不幸のみがこれを痛感させる。 (「重力と恩寵」20 不可能なもの 冨原眞弓訳、傍点は原文イタリック) 「人間の生は不可能」という言い方は、それ自体が矛盾をはらんでいる。この話者はなぜ「人間として」、そのように語ることができたのか。「人間の生」が不可能であるならば、生きた人間として「不可能だ」と語ること…