ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」抄訳(33)DELLぺーパーバックP382~ ピーナットとアーサーと私が南部へ行ったときは、どのステージもアーサーには伴奏者がいなかった。ピーナットは会場整理から警備、そのほかアーサーの右腕となって働いた。私にはわからないことだが、不思議なことに、ピーナットはアーサーの人気の大きさ、見込み――潜在する危険はもちろんのこと――をだれよりも早く予測することができたのである。たとえば、南部全体でどれほどの教会、助祭、牧師がアーサーの評判を聞いて呼んでくれるかはピーナットだけが知っていることだったし、アーサーが学生の間にどれほど熱狂的な人気があるか、ピーナット…