公の席でイギリス国歌とともに歌われることの多い聖歌「エルサレム」は、ウィリアム・ブレイクの第二預言書『ミルトン』の序詩に曲がつけられたもので、イギリス国民の多くが詩を暗唱し、難なく曲に合わせて歌唱しているものである。大江健三郎の四〇代後半の代表作『新しい人よ眼ざめよ』のタイトルも、ブレイクの『ミルトン』の序から採られており、私がブレイクを読むきっかけともなった作品で、ブレイク全著作を読むに関しても影の支えとなった作品である。 梅津濟美訳『ブレイク全著作』の巻二には、ブレイクの預言書三部作のうち第二預言書『ミルトン』と第三預言書『エルサレム』が含まれていて、日本語環境では馴染みの薄いブレイクの後…