『絞首台の謎』(1931年)はジョン・ディクスン・カーの長編第二作で、初めてイギリスを舞台にした作品である[i]。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1976年に創元推理文庫で刊行され、手軽に読めるようになった[ii]。 以上は、『夜歩く』について書いた文章を少し手直ししただけのものである。カーの作品については、半分以上、上記の文章で間に合うだろう。 閑話休題(古いな)。『絞首台の謎』は、アンリ・バンコランを探偵としたシリーズの二作目でもあり、二つ目の事件で早くもパリを離れて、異国で事件に取り組む(もっとも、シリーズ一作目の「山羊の影」がすでにイギリス…