(犯人の名前は伏せていますが、ほぼばらしていますので、ご注意ください。) 『死のジョーカー』(1963年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第17長編だが、前作『死のとがめ』(1961年)[ii]と同様の犯人当てミステリである。つまり、それ以前の『血ぬられた報酬』[iii]や『くもの巣』[iv]のようなスリラー・サスペンス小説ではないということだが、前作と大きく異なっている点がある。ナイジェル・ストレンジウェイズが登場しないのだ[v]。 犯人当てミステリでナイジェルが不在というのは初めてのことで、しかも全編ジョン・ウォーターソンによる一人称の手記の形式を取っている。 このウォーターソンという人物、…