(本書の犯人を明かしてはいませんが、内容や構成には立ち入っていますので、ご注意ください。) 『秘められた傷』[i]は、ニコラス・ブレイクの第二十作目、最後の長編小説である。 今回ブレイクを順番に読み直そうと思った動機のひとつは、本書を再読したいと考えたからだった。『秘められた傷』だけ読んでもよかったのだが、ついでのこと、手元にある全長編(『くもの巣』を除く)を読み返そうと思い立ったので、本書までたどり着くのに随分時間がかかってしまった。 ちなみに、『殺しにいたるメモ』(1947年、1998年翻訳刊行)から始まるニコラス・ブレイク落穂拾いプロジェクト[ii]が始まる以前に読んだブレイク作品の個人…