ごく幼い頃から類稀な楽才を見せ、8歳で交響曲、11歳ではオペラを作曲したモーツァルトですが、一台のピアノで奏されるピアノ・ソナタのジャンルへ足を踏み出したのは意外と遅く(彼にしては)、少年から青年への移行期ともいえる、18歳の暮れから翌年初めにかけてのことでした。 自作のオペラ・ブッファ「偽りの女庭師(La Finta Giardiniera) K.196」上演のためミュンヘンを訪れたモーツァルトは、バイエルン選帝侯の侍従で音楽愛好家だった同年輩のタデウス・フォン・デュルニッツ男爵と知り合い、彼の注文に応じて「ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)」をはじめとするいくつかの作品を書…