バレエの堀内完先生 恩師を思い出す。 僕は十代の頃バレエを習った。先生は堀内完。バレエ界の草分け的な存在だった。 その頃の僕は地元の中学校に通う地味な少年だった。表面は地味でも頭の中は自分勝手な夢がカラフルに展開していた。夢を現実に!何も知らずに前に進んでしまった。 東京都港区西麻布のスタジオのドアを押す。 ピロンピロンと音がして、汗の匂いと香水の匂いがムワッとした。 地下にあるレッスンスタジオから音楽が聞こえる。ピアノの音、ジャズの音。階段を降りていくと、床に脚を投げ出したお姉さんたちがストレッチ。ラインのはっきりわかる体からだ体、タイツもシューズも松ヤニの粉もバレエ用語も全身がうつる鏡も、…