宮崎揚弘の『フランスの法服貴族 18世紀トゥルーズの社会史』(同文館、1994年)を読んだ。フランス革命前のアンシャン・レジーム(旧体制)期の地方都市トゥルーズの司法官の実態を探った地味な労作だ。 フランス旧体制下の法服貴族へのレクイエム 最初に、本書のタイトルにある<法服貴族>という言葉について説明しておくと、フランスの貴族には戦争の際に騎士や指揮官として戦った先祖をもつ古い家柄の<帯剣貴族>と、司法官となって貴族に列せられた新しい家柄の<法服貴族>の2種類がある。帯剣貴族の子弟が若い頃から家柄によって宮廷で重んじられたのに対し、法服貴族の子弟は、司法官に任じられるために大学で学び、さらに弁…