今回は、いつもと少し趣向を変えて、18世紀フランスの冒険小説『セトス』に挑戦してみた。 この小説は、ジャン・テラソン師(1670年~1750年)の作品で、古代エジプトおよびアフリカ大陸を舞台にしている。ギリシア語で書かれた古代エジプトの歴史物語が見つかったのでそれをフランス語に翻訳し紹介するというふれこみで、1731年に出版された。大長編で、邦訳は、その一部である第8巻だけが、岩波書店「ユートピア旅行記叢書」第10巻に収載されている(永見文雄訳、岩波書店、2000年)。この作品は出版当時大好評で、テラソンは、『セトス』刊行直後にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれている。また彼は当時の文学論争…