ムーランルージュにて(1890)カンヴァス油彩 115,5×150㎝〈部分〉 ロートレックに興味を抱いたことのある人に、彼を知らぬ者はあるまい。ホール中央で、周囲の客たちの視線を集めて、ムーランルージュ専属の人気ダンサー、ラ・グリューを相手に、得意のダンス・バトルを披露しているのはバランタン氏だ。 長身の躰は柔軟で、異様なまでに細長い腕と脚をクネクネさせて踊る独特な姿を、だれも観誤ることはありえない。定連仲間は彼を「骨なし」と、あだ名で呼んだ。 後世の我われは、この画よりもむしろポスターで、デザイン化された彼「骨なしバランタン」のシルエットを、より鮮明に記憶している。 この夜も、自慢のダンスで…