ポーランドの国民的詩人・作家アダム・ミツキエヴィチ(1798年~1855年)の長篇叙事詩『バン・タデウシュ』(工藤幸雄訳、講談社文芸文庫、1999年)を読んだ。ミツキエヴィチの代表作であるのにとどまらず、19世紀ポーランド文学の最高傑作の一つとされ、現代でもポーランドで広く読まれている作品だ。 19世紀ポーランド文学の最高傑作の一つ『パン・タデウシュ』 はじめにミツキエヴィチの伝記を簡単に紹介すると、1798年に当時ロシア領だったノヴォグルーデク(現在はベラルーシ領)のリトアニア系ポーランド人の小貴族(ポーランド語ではシュラフタ)の家に生まれ、1829年に故国を離れている。亡命先で1832年に…