令和3年の新年のビデオメッセージでお言葉を述べられる天皇陛下と皇后さま(宮内庁提供) 天子直筆の文書は「宸翰(しんかん)」あるいは「宸筆(しんぴつ)」と呼ばれる。歴代天皇は、国土が天災や疫病などに見舞われる度、自ら写経を行うことで平癒を祈った。京都・醍醐(だいご)寺には後奈良天皇宸筆の般若心経(重要文化財)が納められている。 ▼「民の父母として、徳を行き渡らせることができず、心を痛めている」。奥書には、そのような趣旨の苦悩がつづられていた。皇太子時代の平成29年秋、たっての希望で同寺を訪問した天皇陛下は、その一文を何度も読み返されていたそうである。 ▼宸翰の教えについて、後にこう述べられた。「…