はしご酒(2軒目) その五十四 「ヒトカワ ムキタイ」 古びた皮膚を、皮を、一皮剥(ム)くことで新たなる自分に、みたいな話を、ある若いお坊さんから伺ったことがある。 たしかに、かなり心洗われるイイ話ではあったのだけれど、その話の〆(シメ)の言葉、だけは、どうしても受け入れ難かったのである。 「けっして期待してはいけない」 ん? けっして、期待してはいけない? ナゼ、期待してはいけないのか。 期待することを捨てて、自分自身を一皮むく努力など、到底、私ごときには、できそうにない。 ナゼなのだろう。 先ほどから完全に存在感を掻き消して、聞き手に徹していたOくんに、思い切って尋ねてみる。 「ある若いお…