自選による23篇の短編集。 久々の志賀直哉だ。卒論に書こうと思って全集を買ったくらい、一時は好きだった。 ほとんど読んでいるはずなのだが、ほとんど思い出せない。どこに惹かれたのかも今となっては定かではない。半世紀近く経っている。もう初めて読むようなものだ。 「山科の記憶」などに書かれている妻への視線、犬や鴨など小動物への思いが印象的だ。 志賀直哉はイメージと違って、家庭では短気だが愛情深い。妻をはじめとして女全般に甘いと自分で言っている下りがあるが、そうだろうと思える。子どもの甘え方で優しさがわかる。けっして恐ろしい父ではないのだ。 熱があって留守番しなければならないと言われてすねて甘える子ど…