『春と修羅 第二集』に「林学生」という作品があります。農学校の教員だった賢治が、生徒たちと岩手山に登った時のことを書いた心象スケッチです。次のようなさわやかな言葉から始まります。 ラクムス青(ブルー)の風だといふ/シャツも手帳も染まるといふ/おゝ高雅なるこれらの花藪と火山塊との配列よ/ぼくはふたたびここを訪ひ/見取りをつくっておかうといふ ところが、突如変調し賢治の心に様々な言葉が飛び込んできます。それは、彼自身の分身の声であったり、登山の途中で語り掛ける生徒たちの声であったりします。 さうだかへってあとがいい/藪に花なぞない方が、/いろいろ緑の段階(グリーンステーヂ)で/舶来風の粋だといふ/…