天井から谷に下ると、周りはまた雲の中に入り始めた。 段々と視界が薄れてくる。 地図には「迷」マークがある。 確かに、霧に閉ざされると方向感覚を失い迷いやすいと思われる。 こういった道では注意が必要で、分岐毎に進行方向と現在位置をこまめに確認していく。 いっとき、視界を遮った乳白色の雲は、次第に流れ去り その向こうにそびえる山容が姿を現し始めた。 そして、御前峰に到達すると同時に一気に晴れ渡った。 眼下には、室堂の赤い屋根が見える。 雲のじゅうたんははるか向こうまで続いている。 一期一会 これも登山の醍醐味だと思います。 さあ、ゆっくりと下っていこう。 事故は下りで多い。 足元に注意しながら下っ…