荷造りをし終えた鈴虫は、車の鍵を返せと松虫に迫った。 鈴虫を引き留める気力は、もう前日ほどない。冷静な思考となるには、時間が必要とも思えた。しかし、親子の絆は別物だ。親子の仲も、鈴虫は捨てる気なのか? いや、ありえる。ボイスレコーダーで親子の情愛を、バッサリ切って語っている。 この間の一部始終を、船虫は居間で聞いていた。一言も発せずに居た。 「ねえ、このオッサン一発殴って、目を覚まさせてやってよ。」 ふと、船虫に頼ってしまった。そうだ!船虫よ、何か言ってくれよと、すがった。 すると船虫は 「嫌だよ。」 と、小さく呟いた。それを聞いた鈴虫は 「だよな‼ このオバサン狂ってやがるよな。」 「人を縄…