第四章 縛られた家 柚希の母、嘉江は、綾乃が失踪した理由を今まで頑なに柚希に言わないでいたが、事情が変わったという。 それは、綾乃の夫、慶次からの手紙だった。 綾乃と慶次は同じ高校の同級生だった。 クラスのいじめの標的にされていた慶次に優しく接していた綾乃。 二人は一緒に勉強したりしながら、やがて付き合うようになった。 しかし、綾乃は家族のことや、今どこに住んでいるのかなど、何も教えてくれなかった。 卒業間近のある日、「絶対誰にも言わない約束」で、『左手供養』のことを教えてくれた。 この『左手供養』が、家族をめちゃくちゃにした元凶だと。 嘉江は小さな金庫からぼろぼろの色褪せた紙を取り出してきた…